いつの時代も人々の幸せを願う、愛らしい人形たち
つつみのおひなっこや城下町仙台の堤町で生まれた「堤焼」をベースに、郷土伝統の土人形として宮城の伝統的工芸品に指定されている堤人形。神様への信仰心を形として表現することから誕生した人形づくりは、時代ごとの文化・流行を反映してきました。
製作が始まった江戸時代には力士や歌舞伎役者、浮世絵に描かれる人物などをデザインしたものが大変人気だったといいます。時代は令和となり、堤人形の工房は、今や2ヵ所しかない貴重な存在になりました。『つつみのおひなっこや』の佐藤明彦さんは「伝統を継承していくためにも、時代の流れを汲んだ作品づくりを大切にしたい」と語ります。
一つひとつ丁寧に、繊細な職人の技で仕上げていくため大量生産はできませんが、今も昔ながらの伝統モチーフはもちろん、縁起物として人気の高い猫や伊達政宗公、むすび丸など宮城・仙台ゆかりのキャラクターをデザインして鮮やかに彩色された人形やだるまは、現代の住まいにも馴染むインテリアとして根強い人気を誇ります。「皆さんに元気になって欲しい」という思いで制作された、ピンクや淡いグリーンなどのペールトーンが愛らしいアマビエや鮮やかなビタミンカラーで彩られただるまシリーズも、その豊かな表情とカラフルさが目を惹きます。新たなアプローチで製作されたランナップは、若い世代からも人気を得ています。
「新しいものをつくることが、伝統をダメにするとは思いません。挑戦すればするほど技術が磨かれ、アイディアを生み出す力もつき、職人のスキルを高めることに繋がります。よりよい作品を創り出すことが伝統を絶やさないことにつながっていると考えています」。伝統を受け継ぎながら、時代にあったチャレンジを大切にしたいと話す令和の職人、佐藤さんの挑戦は続きます。