「ただいま」と言いたくなる昔ながらの美味しいお菓子
有限会社いとうや仙台市宮城野区岩切、七北田川にかかる今市橋のたもとにある『創作菓子いとうや』は、明治20年の創業。昔からの馴染みの地元客が多いのはもちろん、「わざわざ車を走らせて来てくださるお客様も多くいらして。そういうお客様にも納得していただける美味しいお菓子を作り続けないとですね」と4代目の伊藤千鶴子さんは語ります。千鶴子さんのどこか耳に残る優しい声は、「岩切の、いとうや」で始まるラジオコマーシャルで耳にしたことがある宮城県民も少なくないのではないでしょうか。
明るい店内には、「どら焼き」「大福」「おまんじゅう」「コーヒーロール」「シフォンケーキ」「ブランデーケーキ」などの和洋菓子が、種類豊富にずらりと並んでいます。
看板商品のひとつ「めんこい野菜」のようなオリジナリティあふれるお菓子も人気ですが、『いとうや』の職人たちが特に大切にしているのは、“定番”といわれる和と洋のお菓子の数々だといいます。
時代とともに多様化するお客様の嗜好に寄り添い、洋菓子部門を拡大したのは、現在社長を務める5代目の雅博さん。「誰もが親しむ定番のお菓子こそ、ごまかしが効かない」と材料選びから製造まで一切の妥協をせずに、本物を作り続けています。6代目となる秀斗さんは、和菓子部門を継承。根強いファンが多い「どら焼き」は、焼き方ひとつとっても並々ならぬこだわりが光ります。
店内には「いとうや」の味を知る地元ゆかりのオリンピックゴールドメダリストとの写真や、地域の小学生からのメッセージが飾られており、地域で長く愛されているお店であることが伝わります。懐かしいだけではなく、時代に合わせた工夫と創造、頑ななほどの職人気質によるモノづくりの姿勢が「いとうや」の美味しさを支えています。けれど、やはりそこにあるのは「ただいま」と、声をかけたら「おかえり」と返してくれそうな、代えのきかない“いつものお菓子”なのです。